教室に来られない日も、お家でできる応援を。お子様の明日を豊かにする「心地よい夜」の過ごし方
▋はじめに
教室に来られるご家庭のご相談には
「学校になかなか行けない」
「朝が起きられない」
「昼夜逆転してしまっている」
といった切実なものがあります。
しかし、私たちも教室の中での支援が主であり、「来室できないお子様」に対しての支援には不十分さを感じていました。
そこで今回、生活に関するテーマも時折取り上げることで、少しでもご家庭でのお子様の過ごし方が豊かになるヒントをご提示できればと思います。
いきなりですが、皆様は「早寝早起き」は得意ですか?
古くから「早起きは三文の徳(得)」と言いますが、これは現代の科学的・医学的視点から見ても、多くの面で事実であると裏付けられています。
金銭的な利益に繋がるかはさておき、早寝早起きは発達に特性を持つお子様にもお勧めできる部分が非常に多いです。
今回は『安定した生活リズムがいかに大切か』について、“おすすめのナイトルーティン“もご紹介しながら進めていきます。
▋令和版“三文の徳(得)”とは

では、早寝早起きで実際に得られる効果には、どのようなものがあるのでしょうか。
最新データが教える脳の仕組み
文部科学省の調査では、「早寝早起き」の習慣があるお子様ほど、学力テストの平均点や自己肯定感が高い傾向にあることが示されています。
朝食と学力
朝食を毎日食べる(早起きの習慣がある)お子様と、そうでないお子様では、全教科において正答率に有意な差が見られました。
これは、朝の太陽光を浴びることで脳内のセロトニン(集中力を高める物質)が活性化し、午前中の学習効率が最大化されるためです。
認知機能
「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、特にお子様時代に十分な睡眠と規則正しいリズムを持つことが、脳の認知機能の発達に不可欠であると明記されています。
「ぐっすり眠る」と「心が安定する」の深い関係。朝の太陽が夜の眠りを変える!
「三文の徳」の「徳」の一つは、情緒の安定です。夜型生活はうつ傾向や不安感を高めるリスクが指摘されています。
時差ボケの解消
夜更かしによる「社会的時差ボケ(ソーシャルジェットラグ)」は、自律神経の乱れを引き起こします。
逆に、早起きして日光を浴びることで、夜に睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されやすくなり、良質な睡眠が確保されます。
体内時計と身体的健康
2017年のノーベル生理学・医学賞は「体内時計(サーカディアンリズム)を制御する分子メカニズムの発見」に対して贈られました。
遺伝子レベルの時計
人間の体には遺伝子レベルで時計が組み込まれており、夜間に活発になる修復ホルモン(成長ホルモンなど)を最大限に活用するには、24時間の生体リズムに合わせた生活が最適です。
まとめ:令和版「三文の徳(得)」
「三文」とは、以下の3つと言い換えられます。
- 知の徳: 集中力と記憶力が向上し、学習や成果が出る。
- 心の徳: セロトニンが分泌され、穏やかで前向きな気持ちになれる。
- 体の徳: 成長ホルモンや代謝の正常化により、健康な体が維持される。
▋現代は生活リズムを維持するのが大変!

生活リズムが大切であることは分かりましたが、現代はそれを阻害する「誘惑」も非常に多いですよね。
「興奮」と「報酬」のセット(脳の過覚醒)
ゲームやSNSは、脳の報酬系(ドーパミンという快楽物質が出る仕組み)を激しく刺激するように設計されています。
特に特性を持つお子様は没頭しやすく、刺激に依存しやすい特徴も見られます。
こうしたお子様は、特に長期休みの場合には昼夜逆転しやすく、学校再開の際のハードルが非常に高くなってしまいます。
交感神経の優位
スリルや興奮、新しい情報の連続は、自律神経を「戦うモード(交感神経)」にします。本来、夜は「リラックスモード(副交感神経)」になる必要がありますが、デジタルデバイスはその切り替えを力ずくで止めてしまいます。
依存性のループ
強い刺激を受けると脳はさらにそれを求め、「あと5分だけ」が止まらなくなります。加えてオープンワールド系のゲームでは、明確な「区切り」がなく、いつまでも続けられてしまう環境もあります。
特に前頭葉が未発達な小学生・中学生は、この衝動を抑えるのが大人以上に困難です。
では、どのようにしてゲームやスマホから離れればいいのでしょうか。
それはまた今後お話ししていきます。
ただ、『再生数』や『フォロワー数』などが大きな価値を持つ現代においては、企業や優秀なエンジニア、クリエイターができるだけ人々の目に留まるような情報発信を行っているわけで、お子様をデジタル刺激から完全に切り離すのは難しいのが現状です。
大事なのは、『自分から望まずともスマホを操作させられていることに気付けること』かもしれません。
誘惑以外にもあります。何事も適度に…
学習・習い事の夜型化
塾や習い事による帰宅時間の遅れが、夕食や入浴の時間を圧迫し、結果として就寝時間が遅くなる構造があります。
深夜までの学習は「脳の覚醒」を招き、深い睡眠を阻害します。
朝食の欠食(体内時計のリセット不足)
朝食を抜くことは、単なるエネルギー不足だけでなく、体内時計の同調(リセット)を妨げます。
朝の光と食事の刺激が揃わないことで、生体リズムが24時間の周期に適合できず、日中の眠気や夜間の覚醒に繋がります。
運動遊びの減少(睡眠圧の低下)
外遊びや運動の機会が減ることで、日中の活動量が不足しています。
適度な身体的疲労(睡眠圧)が蓄積されないため、夜になっても自然な眠気が訪れにくくなります。
▋正しい生活リズムとは?

ここまでの中でも何度か出てきた言葉について、とても重要なので少し掘り下げます。
“自律神経”は身体の管理人
自律神経は、私たちの意思とは関係なく、24時間体制で内臓、血管、呼吸などの働きをコントロールし、生命を維持する「自動調整システム」です。
私たちの身体を保守点検する“管理人”といってもいいでしょう。
その役割は、大きくわけて2つです。
「活動」と「休息」のバランス調整係
自律神経は、正反対の働きをする2つの神経がシーソーのようにバランスを取ることで、体の状態を最適に保っています。
交感神経(活動モード)
役割:日中や興奮時、ストレスを感じた時に優位になります。
体の状態:心拍数が上がる、血圧が上昇する、瞳孔が開く、筋肉が緊張するなど、**「戦うか逃げるか」**の準備をします。
副交感神経(休息モード)
役割:夜間やリラックス時、食事中などに優位になります。
体の状態:心拍数が下がる、血圧が低下する、消化活動が活発になるなど、**「体の修復とエネルギー蓄積」**を行います。
体そのもののバランス調整も行います!
外部の環境が変わっても、体の中の状態を一定に保つ役割(ホメオスタシス)を担っています。
- 体温調節: 暑い時に汗をかいて体温を下げ、寒い時に震えて熱を作る。
- 循環・呼吸: 運動時に酸素を多く取り込むために呼吸や血流を速める。
- 消化吸収: 食べた物を消化し、栄養として体内に取り込む。
生活リズムとの関係
現代社会では、夜遅くまでのゲームやスマホの光(ブルーライト)刺激により、本来「副交感神経」が優位になるべき夜間に「交感神経」が刺激され続けてしまいます。
このスイッチの切り替えがうまくいかなくなることが、自律神経の乱れ(自律神経失調症など)の正体です。
発達の著しいお子様にとっては、特に自律神経の乱れは避けていきたいところですね。
▋発見!ナイトルーティンで身体を整えよう。

ここからは教室からのお勧めのナイトルーティンをご紹介します。
目標はずばり『副交感神経を正しく刺激し、交感神経を刺激するものをどれだけ減らせるか』です。
入浴
湯船が熱すぎると交感神経が優位になるため避けましょう。
一方で、適度な温度でゆったりと湯船に浸かるのは副交感神経を優位にするのでお勧めです。
具体的には、
温度:38℃〜40℃の「ぬるめ」
42℃を超える熱いお湯は、逆に交感神経を刺激して体を興奮させてしまいます。
38〜40℃程度の心地よい温度が、副交感神経のスイッチを入れるのに最適です。
時間:15分〜20分程度の全身浴
みぞおちまで浸かる半身浴も良いですが、リラックス効果を最大化するには肩まで浸かる全身浴(浮力を利用して筋肉を緩める)が効果的です。
タイミング:寝る「90分前」に上がる
入浴で上がった「深部体温」が、90分ほどかけて急降下するタイミングで、人間は強い眠気を感じ、深い眠りに入ることができます。
長湯しすぎても心臓に負担をかけ、交感神経を優位にしますのでご注意ください。
夜間の「デジタル・デトックス」と環境調整
デジタル機器の使用を終える
寝る1〜2時間前からはスマートフォンやゲームの使用を控えることが推奨されています。
ブルーライトによる視覚刺激は、メラトニンの分泌を抑制し、脳を「昼間モード」に引き戻してしまいます。
グラデーション消灯
寝る1時間前から家の照明を少しずつ落とし、脳を「夕暮れ」の状態にする。
“寝る”という行為にも体力を使うことを知っていますか?

実は、「ぐっすり眠る」という行為には、かなりのエネルギーが必要なんです。
寝るという行為は、単に電源を切るわけではなく、脳を休息モードへ切り替え、体温を下げ、一晩に数十回の寝返りを打つという「積極的な身体活動」だからです。
特に発達期のお子様は、日中の活動で体力が空っぽ(電池切れ)になると、寝るためのスイッチを押すエネルギーまで不足してしまいます。
その結果、体はヘトヘトなのに脳が興奮して眠れない「過覚醒」の状態に陥ります。
ご覧の方の中にも「疲れすぎて寝つけない」ということを経験されたことがあるのではないでしょうか。
特性を持つお子様は体力コントロールがとても苦手です。深い睡眠のためには、夜まで体力を使い果たさせず、眠るための「予備バッテリー」を残しておくことが大切です。
体力コントロールについては別の記事もあげていますので、併せてご覧ください。
正しいナイトルーティンを意識すると良い体力回復が行われ、良い循環が生まれやすくなります。ぜひお試しください。
▋まとめ:安定した生活リズムを経験してください
最後にまとめると、
- 早寝早起きは「知・心・体」へ良い影響があり、本当に三文の徳だった
- 現代は生活リズムを整えるのが大変!それはお子様が切り替えられないからだけではない
- まずはナイトルーティンから変えてみませんか
というお話でした。
この後に厚生労働省のガイドラインを踏まえた『児童期の正しい生活リズム』も載せておきますので、参考にしてみてください。
また学習に関わらず、お子様の発達にお悩みの方がいれば、お気軽にオレンジスクールつくば教室にご連絡ください。
▋児童期の正しい生活リズム

適切な睡眠時間の確保(9〜12時間)
厚生労働省のガイドラインでは、小学生に必要な睡眠時間を以下のように定めています。
推奨時間
9〜12時間(中高生は8〜10時間)。
重要性
児童期は脳の神経ネットワークが急激に発達し、成長ホルモンが分泌される重要な時期です。睡眠不足は学力低下、肥満、抑うつ、多動傾向のリスクを高めると指摘されています。
理想的な就寝時刻
翌朝の起床時間から逆算し、午後9時〜10時までには入眠していることが望ましいとされています。
朝の「光」と「朝食」による体内時計のリセット
体内時計は24時間よりも少し長い周期を持っているため、毎朝リセットする必要があります。
光の刺激
起床後すぐに太陽の光を浴びることで、脳のスイッチが入ります。
朝食の役割
朝食を摂ることで、脳だけでなく「体の臓器の時計」もリセットされます。
特にタンパク質に含まれるアミノ酸は、夜の睡眠を助けるメラトニンの材料になります。
日中の「身体活動(外遊び・運動)」
目安: 合計で1日60分以上、息が弾む程度の運動を行うことが推奨されています。
効果: 日中にしっかり体を動かすことで「睡眠圧(眠気のもと)」が高まり、夜間のスムーズな入眠と深い眠り(ノンレム睡眠)に繋がります。
【編集後記・参考文献】
今回の記事は、大切なお子様の心身の発達を守るため、以下の公的機関が発行している最新の知見やガイドライン(厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」、文部科学省「子供の生活習慣づくり」資料など)に基づき、児童発達トレーナーの視点で解説しました。
一人ひとりのペースを大切にしながら、まずはできることから取り入れてみてくださいね。
