漢字を「見る力」を養おう!~「書く力」向上のために~
「漢字を覚えて、書くこと」――皆さんは、得意でしたか?
正しく覚えられているつもりでも、漢字には「突き出る」「突き出ない」「こっちの画よりも、こっちの画の方が長い」「はねる」「はねない」「画は2本?3本?それとも1本?」など、微妙な違いがたくさんあり、完璧に正解するのは存外、難しいものです。
そんなお悩みに対してのアプローチとして、意外と「書く」よりももう一歩前段階・・・「見る」力をパワーアップさせることがおすすめです。
見る力を丁寧に養ってから漢字学習を行うことで、正しい形を捉えやすくなり、より正確に書く力の向上が期待できます!
そこで、今回は「見る力」を養う「ビジョントレーニング」の手法を取り入れた、漢字学習のアイデアをお伝えしていきます。
ビジョントレーニングとは
「ビジョントレーニング」とは、眼球運動を通して、目でものを捉える力を高めるトレーニングのことです。
目で見たものの形、位置関係や大きさ、バランスなどを正しく認識したり、身体をイメージに沿って動かしたりすることと深い関係があり、学習前のウォーミングアップにはうってつけです。
過去の記事でも、ビジョントレーニングの方法を「文字を綺麗に書くコツ」と絡めてご紹介していますので、よろしければぜひご参照ください!
▼過去記事へのリンクはこちら
なぜ「漢字学習×ビジョントレーニング」が効果的なの?
そんなビジョントレーニングですが、漢字学習においてはどのように効果的といえるのでしょうか。
その秘密は、漢字学習でよく行われる「視写」にあります。
お子様が新しい漢字を覚える際、多くの場合まず「お手本」を見てなぞり書きをしたり、
「お手本」を傍らに置いて見ながら真似て書いたりするかと思います。これを「視写」ともいいます。
実はこの「お手本を見る」という段階がとても重要で、この時に漢字の特徴を正しく目で捉えられていないと、誤った形でインプットしてしまい、後々せっかく「よし、書けた!」と思っても「ここが違っているよ。」と指摘されてしまう事態が起きかねません。
このことから「見る力」はすなわち「観察をする力」であり、この力を養うことが効率のよい漢字学習には不可欠といえます。
漢字学習における「見る力=観察する力」とは、具体的には下のような要素が挙げられます。
- 画同士の長さ比べを正しく行うことができる
- 「とめ」「はね」「はらい」の形の違いを見分けられる
- 画が密集している部分についても、画の本数を正確に数えられる
- 画のスタート地点を正確に見つけることができる(突き出るか、突き出ないか)
このように「視写(手本を真似て書く)」と一口にいっても、実は必要な視点がたくさんあるため、ビジョントレーニングで「観察力」を養っておくことは大変重要といえるのです。
漢字を「見る力」を養う2つのビジョントレーニング
それでは、当教室で実際に「漢字学習」の際に取り入れている2つの方法をご紹介します。
① 『グリッド線点つなぎ』の視写
▼下の画像のように、グリッド線の点を繋いで作ったお手本の図形を見ながら、全く同じ形になるように視写してもらいます。
この教材を通して、漢字の字形を捉えるのに役立つ『空間認識能力』『位置記憶能力』を養うことができます。
またそれだけではなく、滑らかに鉛筆を動かすための『運筆練習』も同時に行うことができるため、漢字学習のウォーミングアップにぴったりです。
まだ運筆に慣れていないお子様などで、「線が震えてしまう」「真っすぐな線を書くことが苦手」という場合には、是非「定規」を当てながら点つなぎをしてみてください。
② 漢字の間違い探し
▼下の画像のように、「あえて誤った箇所のある漢字」と「正しい漢字」とを並べてお子様に提示し、「どこが間違っているか」を見つけて印をつけてもらいます。
上の画像の3種類の漢字、それぞれどこにまちがいがあるでしょうか…?
正解はこちらです!▼
この教材は、漢字の形の微妙な違いを発見する「観察力」を養うことが目的です。
漢字のテストなど、うっかりケアレスミスで「画が1本足りない」「突き出るべきところを突き出なかった」等、だれしも経験があるのではないでしょうか。
訂正する際に「あれ?どこが違っていたんだろう?」と中々まちがいの箇所を見つけられず、やきもきすることも・・・。
そのような場合には、一度客観的な視点に立ってみると、まちがいを発見しやすくなることがあります。
「漢字の間違い探し」は、客観的視点に立ちながら「観察すること」に焦点を絞って取り組めるので、書くことに負担感を感じやすいお子様にもとってもおすすめです!
まちがいさがしは、ゲーム感覚で楽しく行いやすいのもよいところです。
おわりに
今回は漢字学習における「視写」をぐっと行いやすく、そしてさらに効果的にするための方法として、2つのビジョントレーニングをご紹介しました。
余談ですが、『学ぶ(まなぶ)』という言葉の語源は、実は『真似ぶ(まねぶ)』であったというお話があります。
模倣することと学習することは、切っても切り離せない深い関係性がありそうですね。
なお今回、画の微妙な違いによるケアレスミスのお話を挙げましたが、一方で漢字には「許容字体(許容の形)」というものも存在します。
漢字には書き継がれてきた長い歴史があり、その歴史の中で、習慣に従ったさまざまな書き方が生まれてきました。
そのため、中には「この形だけが正しい」と言い切ることが難しい漢字もあり、そのような場合には何パターンかの「正解」を取り決めています。
これを「許容字体(許容の形)」と呼んでいます。
「許容字体」は、平成28年に文化審議会国語分科会が報告した「常用漢字表の字体・字形に関する指針」に示されています。
検定や試験などでは、許容字体の範疇である場合には正解とされることもありますので、興味のある方はぜひ調べてみてください。
参考:「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」の代表音訓索引
(※『文化庁ホームページ』へ移動します。)
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