気持ちの言葉を増やそう!~感情のラベリング~
もしも、嬉しいできごとがあって心が沸き立つような興奮を感じたとき、皆さんは誰に、どんな言葉でその気持ちを伝えるでしょうか?
もしかすると、人には敢えて伝えずに、自分の心の中にしまっておくという場合もあるかもしれません。
逆に、悲しいできごとに直面したときの乗り越え方も人によってさまざまです。
例えば「信頼のおける人に相談をする」「自分だけが読める秘密の日記帳にしたためる」などなど…
共通していえることは、誰かとの対話にせよ、自己との対話にせよ、人が自身の心の中を整理するということは「感情を言葉にして表現する」ことと密接に関わっているということです。
心理学ではこの工程を「感情のラベリング」と呼びます。「感情のラベリング」はお子様の学習支援、療育、SSTにおいてとても重要ですので、今回はそのメリットと教材例をご紹介してまいります。
感情のラベリングとは?
「ラベリング」というと、得てして「決まった型に当てはめる」といった機械的な印象を受けるかもしれません。
しかし、ここでポイントなのが「気持ちを表す言葉は無数に存在している」という点です。
たとえば「いい気持ち/よくない気持ち」のように白黒はっきり決めることが難しい、グレーな感情を表す言葉に、「戸惑う」「まんざらでもない」「歯がゆい」といった言葉がありますね。
「ラベリング」とは、そうした気持ちのグラデーションを表現する言葉の中から、今の自分の気持ちによりしっくりくる言葉はどれか、吟味し、試行錯誤する作業でもあります。
つまり「感情を決まった型に当てはめる」のではなく「白黒つけがたい曖昧な感情」に「名前を付ける」=「居場所を作ってあげる作業」といえるのです。
もちろん、「ラベリング」は自分が扱える気持ち言葉の語彙が増えれば増えるほどより精密に行えるようになりますので、国語の学習や辞書を用いた学習などを通して、語彙力を高めることも大切です。
(記事の最後には、実際に教室で取り入れているオリジナルの教材をご紹介します!)
「感情のラベリング」にはどんなメリットがあるの?
①「0か100か」の二極化思考を変えていくことができる
私たちは、自分の感情を自身が持っている語彙でしか言い表すことができません。
もしも実際の感情に対して「強すぎる言葉」「大雑把な言葉」で表現をしてしまうと、本心やそう感じた「理由」の方に目が向きにくく、混乱状態になってしまうことがあります。
逆に、自分の感情を何と形容してよいか分からず、自分の中にしまい込んでしまい、後々かえって大きな負担を感じることも・・・。
こうした「0か100か」に二極化する思考は、必要以上の心理的負荷を与える恐れがあるため、なるべく「0と100の間」のグラデーションで自他の感情の起伏を捉えることがお勧めです。
二極化思考は気持ちを表現する言葉の語彙が少ない状態で起きやすく、「0と100の間」を表現できる言葉を沢山知っていくことで、曖昧な感情を曖昧なものとして受け止められるようになります。
自身の感情をありのまま受け止められることは、自己肯定感のアップや心身の安定、切り替えが上手くいくことにも繋がります。
「感情のラベリング」を試みる中で気持ちの言葉の語彙を増やすことは、まさしく二極化思考を改善して、ストレスと上手に付き合っていくために有効といえるのです。
②説明力やヘルプ要請力を伸ばせる
感情表現の語彙が増えると、自身の気持ちや困り感を他者に伝えることがしやすくなります。
「気持ちの言葉」を学習する初期段階では、たとえばお子様の気持ちが動いている時に合わせて「くやしいね。」「さみしいね…。」「嬉しいね!」「落ち着くね。」というような形で、大人がお子様の気持ちを言葉で代弁する方法があります。
その後、さらに新しい「気持ちの言葉」を学習する際は、お子様の実生活に即した実例を挙げて「たとえば、こんな場面で使うことがあるよ」と紹介していきます。
気持ちの言葉の学習に慣れてきたら、今度はお子様に「自分だったら、どんな時にこんな気持ちになりそうかな?」とインタビューをして、お子様自身の体験と言葉を結びつける機会を作ることも効果的です。
気持ちの言葉と自身の感情が結びつくと、プラス感情・マイナス感情問わず、お子様の気持ちを表現するツールが増えてまいります。これにより、よりいっそう周りの人と共感し合ったり、自分の状況を他者に伝える力の向上をねらうことができるのです。
こうした学習を楽しく、かつ主体的に取り組めるよう、オリジナルの教材を作りましたので、次項でご紹介します!
教材例
鶴見教室では、下のような教材で「感情のラベリング」を学習しています。
使い方は以下の通りです。
- 『よく使う気持ちの言葉リスト※画像②』から、今日学習する言葉を1つ選んで、辞書等で意味を調べてもらいます。
- 選んだ言葉を付箋に転記したら、言葉の横に、当てはまる気持ちの色で●マークを描いてもらいます。この時、色の数は何色でもかまいません。
- 『気持ちの言葉強弱表※画像①』に、その言葉で表現される感情が強いと思うほど右側へ、弱いと思うほど左側へ、貼り付けます。
- できれば「たとえばどんな時にこの言葉が当てはまりそうか」を大人とお子様とでいっしょに想像してみます。
ポイントは「気になる言葉をお子様自身で選んで、意味も極力自分で調べてもらうこと」、「気持ちの色はいくつ入れてもよいこと」、「特に強弱は人それぞれの部分であり、正解はないので、あくまでお子様自身の場合を想定して決めてもらうこと」です。
気持ちの言葉は「自分が今後使っていけること」を目指して学習するものということで、いかに主体性をもって取り組んでもらえるかが大切です。そのため、教室では「ピックアップする言葉は、毎回お子様自身で選んでもらうこと」を大切にしています!
▼『気持ちの言葉強弱表※画像①』
▼『よく使う気持ちの言葉リスト※画像②』
▼もしも、言葉を選ぶ際の選択肢をもっと増やしたい!と感じた場合には、以下の書籍からピックアップしてみるのもお勧めです。こちらは小学校高学年~中高生のお子様にお勧めの書籍になります。
創作、作文、対話、スピーチ等の様々な活動にも活かすことができますので、たとえば「物語を書いてみたい」「漫画を描いてみたい」「作文が得意になりたい」「youtuberになってみたい」といったお子様にも大変お勧めです!
おわりに
今回は、感情表現の語彙を伸ばす学習支援についてご紹介してまいりました。
気持ちを表す言葉を色々調べていると「あれっ、想像していた意味と違うな」という気づきがあったり、「この言葉って元来こういう意味だったんだ!」という発見があったり、大変興味深いものです。
お子様にも、大人の方にもおすすめな取り組みですので、ぜひご家庭でも取り入れてみてください。
鶴見教室では今後も、お子様達に合った学習の方法を模索し、支援を行っていきます。
お子様のこだわり、学習遅滞、不登校、多動、注意散漫、音に敏感、コミュニケーション等に関することで、お悩みや不安なことがございましたら、お気軽にご相談ください。
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